最終章  別れ

 

  「・・・おい、今なんて言うた?」

  「・・・だから、転校するって・・・。」

  しばらく、この場はし〜んとなった。

  「ほんと・・・なのか?」

  佑一は、出来れば信じたくなかった。ずっと好きだった美香と、せっかく一緒になれたのに、

  もう別れなければいけないなんて・・・。

  「遠くへか?」

  「・・・うん。こんどはイギリスへいくことになっ・・」

  「いぎりすぅ???」

  「おい佑一、そんなに遠くじゃ遠距離恋愛もできないな・・・」

  「・・・いいさ。」

  「?」

  「永遠の別れじゃ・・・ないから。」

  「・・・。」

  沈黙が続いた。その日は、うれしさと悲しさが一緒くたになってあふれ出てきた。

  

  美香の引っ越し当日、夜6時。

  どうしてもやらなければいけないことが、佑一にはあった。

  美香に、最後の・・・いや、

  贈る言葉を言うということが。

  しかし、ちょうどその時刻まで、佑一は、学校にいなければならなかった。

  佑一は、学校でそれを終わらせると同時に、一目散に走った。

 

  「・・・結局、佑一は来られないみたいね。」

  美香。悲しげな顔でうつむいて、先に見送りに来た大輔たちに言った。

  「さぁ、行こうか。」

  美香の父親。すると、向こうの方から佑一は走ってきた。

  「!」

  「やっぱりきてくれたんだ・・・。」

  「ごめんな・・・おくれて・・・。ところでおじさん、少しだけ、時間をくれませんか。」

  「・・・とうさん・・・」

  佑一と美香。

  「・・わかった。」

  「・・ちょっと、二人きりにさせてくれないか。」

  「もちろん。」

  、と大輔。

 

  二人、暗くなった公園を歩く。

  「もうこれが・・・最後なのね。」

  「・・・。」

  「楽しかったね・・・今日まで。」

  「・・・。」

  「せっかく一緒になれたのに・・・もう今日で・・・」

  「最後じゃないさ。」

  「え?」

  「きっと・・・きっと、また会えるさ。」

  「・・・。」

  「永遠の別れじゃ・・ないんだから・・・。」

  「・・・。」

  美香が泣いた。佑一の前で、初めて泣いた。

  「泣くなよ・・・こっちだって泣けてくるじゃないか・・・。」

  「・・・わかった。もう、泣かない。あたしたち、ずっと一緒だもんね。」

  「うん。」

  しばらくの沈黙。

  「・・・なぁ、これ、持ってってくれないか。」

  「・・・?」

  「なか、見ていいよ。」

  「・・・帽子?」

  それは、この前の発表会で佑一が使った物だった。

  「いいの?」

  「その帽子見て、オレや、演劇部のみんなを思いだしてくれよな。」

  「・・・うん。・・・?この下にあるのは?」

  「・・・オレが書いた「詩」だ。」

  それには、こう書かれていた。

  「きっとまた会える

    これからそれぞれの道を歩んでいくために

   しばらく会えないね

   君も僕も今までずっと

   明るく過ごしてきたね

   すごく楽しかったよ でも

 

   しばらくお別れだね

   寂しい気持ちもあるけれど

   空の向こうにはばたこう

   きっとまた会える

 

   さよならなんて絶対言わない

   永遠の別れじゃないから

   きっとまた会えるから

   その時をずっと待つよ

   君はずっと僕の心の中にいてくれるから

 

   今まで君のこと本気で好きだったんだから

   ずっと待てるはず

   僕は君に会うまでずっと

   こんな切ない気持ちに

   なったことがなかった でも

 

   しばらく会えないよね

   いつ会えるかわからないけど

   君への気持ちは変えないよ

   きっとまた会える

 

   僕の気持ちはずっと変わらない

   初めてこの気持ち感じたから

   きっとまた会えるから

   その時にもう一度

   君を本気で好きだという事を直接伝えたい

 

   君は今どんな気持ちでいるの

   どんなこと考えてるの

   このままいつまでも会えない

   ことはないよね

 

   さよならなんて絶対言わない

   永遠の別れじゃないから

   きっとまた会えるから

   その時をずっと待つよ

   君はずっと僕の心の中にいてくれるから

 

   本気で君を愛しているから

   いつかまた会える」

 

  「・・・ありがと。」

  「・・・。」

  「・・・そろそろ・・・行かなくちゃ。」

  「うん。」

  「本当に・・・ありがとう。」

  「うん。また会える日まで・・・元気でな。」

 

   きっとまた会えるから

   さよならは言わない。

   きっとまた会えるから・・・。

  

           The End

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