Vo3 総体
サッカー部の今日の練習が終わった。
確実に去年よりも活気が出ている。 去年よりは・・・。
それでも11人オーバーしただけで、控えの選手は3人しか居ない。
この状態で試合に勝てるのかどうかはさておき、
試合ができる、と言うことではボクや拓也達は嬉しいのだった。
そして、壮行会を迎えた。
「えー、今回僕たちサッカー部は、○○中と海南公園で一回戦対戦します。
人数が揃ってやっと試合に出られるので、一生懸命頑張ってきます。」
うちのキャプテンである隆史の言葉だけでサッカー部の出番は終わった・・・
・・・それだけかぁ?
「え、これだけで終わり?」
「他の部ってもっと長くやってたような・・・;」
・・・と、とにかく、壮行会っていうことで気合いが入った・・・ハズだ。
壮行会が終わって、教室へ帰った後、はるかが話しかけてきた。
「ねぇ、あんたら初試合でしょ?ま、がんばりぃ。」
「ま。がんばりぃってなぁ・・・ま、がんばってくるさ。」
「アタシは総体ないんだからね。」
そう、はるかは吹奏学部だから総体ないんだ・・・
「でもアタシらはこの前の全国大会で賞とってきたもんね♪ アンタらにとれる?」
「う、うるせーやこの野郎!」
まったく・・・コイツの憎たらしさときたら・・・
そう。うちの学校の吹奏学部は異様に(?)強く、毎年のように大きい大会に出ては賞を取ってきている。
というか、いつの間にかボクははるかとよく口げんかするような仲になっていた。
そして翌日・・・
顧問の先生の言葉。
「じゃぁ先発メンバーを発表する。ゴールキーパー背番号1番西崎!ディフェンダー・・・」
(人数少ないのに先発じゃなかったらボクってとんだアホだよなぁ・・・先発に入ってますように・・・)
「2番大木!左バックスな。3番新井!お前はスイーパーに回れ。そして・・・」
(わー背番号4はボクだぁ!呼ばれるかなぁ・・・呼ばれるよなぁ・・・)
「5番小原・・・」
(でぇぇぇぇぇぇ?!)
「じゃない、一人飛ばした。4番中原、いつもの通り右バックスにいけ。5番小原はボランチで・・・」
(ほっ・・・ビックリしたぁ・・・)
「6番兎我野、小原とダブルボランチだから小原が右に来て・・・」
・・・などとずっと作戦を練っていた。ボクは安心感からスポドリを飲みながら横から話を聞いていた。
「・・・というわけだが、とにかくサッカーを楽しんでこい!今年最初の試合だからな!」
やっと試合ができる。うれしい。さっそくピッチへ・・・
「・・・おい中原!」
「え?」
「・・・スパイク、忘れてるぞ・・・」
「あ・・・;」
どうもうれしさと安心感のあまり副交感神経が働いているのかも・・(汗;
そんなこんなで、試合が始まったのだった。
「もっと前出て!」
「マークつけー!ブロックブロック!」
こんな言葉が飛び交う。うちのイレブンは実に今年初めての試合だ。
もちろんイレブン全員が張り切っていた。
「おい中原、マーク!」
いつもの練習より動きは固かった。柔軟に動くことができなかった・・・
試合ができたという喜びと同時に、試合に慣れていないために動きが・・・;
「おい、抜かれてるんじゃねー!」
やっぱどーも調子が出ない。あれよあれよと言う間に・・・
「右サイド来てる!」
マークの相手をブロックしにいったが・・・
「センタリング来る!」
「行った、ブロック!」
その言葉を言う前に、先制点を入れられてしまった・・・。
いつの間にか。前半のハーフ25分が終了した時点で、既に6点を入れられていた。
やはり経験不足もたたったか・・・
「後半はもう少し細かいプレーを大切に動けよ。じゃぁGK小宮山と佐川チェンジしてシステムを変える。」
中盤を固める。FW森崎はMFにまわれ。配置は・・・
あとは、ボールキープ率が悪い。もう少し正確にパスを回すんだ。いいな。」
・・・そして、後半が始まった。
後半は気合いが入ったのか、さっきよりボールのキープができている。
イレブン全員が、一体となって動き始めかけている・・・
しかし。
やはり経験不足は恐ろしいものだ。
「左サイドマークいけ!」
「アカン、中入れるなよー!」
気がつけば、後半も終わり近く。後半だけでも3点入れられた。
そして、たぶん最後の得点のチャンスがやってきた。
ボクはポジション柄、前へは出ていってないのだが・・・
ボクがカットしたボールをロングパスで前へつなげた。
そして、うまく前へ出て、FWがうまくやってくれれば1点は入る・・・
後半もう残り時間はない。
最後のチャンス。ボクは後ろでFW達を見守っていた。
第4章へ続く