第8章
・・・また1週間が過ぎた。
その日、ボクは水木の意外な言葉を聞いた。
「来島君。」
「なんか用?」
「ちょっと話が。」
行ってみた。水木は、真剣な顔して、ボクに言った。
「来島君はさ、ナッちゃんのこと、好きなの?」 (ナッちゃん=菜摘)
「えっ?」
「違う?」
「・・・今は分からない。でも・・・」
「そう・・・」
・・・どうやら、ボクの気持ちを察したようだった。
「あたしね、岸田君になんて返事しようかと思って悩んでた。でも、・・・」
「?」
「・・・あたし、岸田君と付き合うことにする。」
「・・・」
「あれだけ熱心になってくれてるから、あたしも彼のこと好きになれるように努力しようかな、って思って・・・」
「・・・うん。」
「じゃ、今からそう言ってくる。・・・来島君も・・・」
「ボクも・・・本当に好きな人、探すよ。」
だまってうなづいて、水木桜子はリュウのもとへ行った。
・・・よかったなぁ、リュウ。
さて、あと問題は・・・ボクの気持ちをはっきりさせること、ただそれだけ、みたいだ。
そうこう考えているうち、今日も学校が終わった。
帰ろうとしたら、また由里が来た。
「あんた、ちゃんと考えてあげた?」
「・・・そーだな・・・」
「真剣に考えてあげてよ!ナツミはアレでも繊細なとこあるんだから。」
「・・・でもおまえってさ、何でそんなに首を突っ込むんだ?」
「え・・・」
「妙に俺と菜摘をくっつけようとしてるじゃないか。」
「・・・経験者だからよ。」
「はぁ?」
「あたしは3年くらい前、ある人と付き合ってた。その人のこと、初めは全然気にしてなかった。
でもね、その人のこと好きって気づかせてくれたのはナツミだった。」
「・・・」
「その人は前々からあたしのこと好きだったらしくて。で、あたしもその人を好きってきづいて、あたしから告白した。」
「で?」
「もちろん付き合いだした。しばらくの間はラブラブ状態だった。」
「でも今はおまえに彼氏なんていないよな?」
「・・・引っ越しちゃったの。その人。しかもアメリカへ。」
「手紙とかかいてないの?」
「・・・全く連絡はなし。今でも好きなのに、住所も初めに教えてくれたところと変わっちゃって・・・」
「・・・そうだったんだ。おまえにもそんな過去があったなんて・・・でも、ボクは全然知らなかったぞ。なんで?」
「その人、学校違ったし、うちの学校ではナツミとあたししか知らないことにしてたから。」
「・・・理由は聞かないほうがいいかな。」
「うん、ありがとう。で、だから、あんた達には本当に一緒になって欲しいから。それに、あんたって絶対ナツミを・・・」
・・・
「え、ちょっと!どこ行くのよ!」
ボクは一目散に走り出した。
「あ、ちょうどよかった。話があるんだ。」
西野。こいつには、話しておかなくちゃいけない。
「なに?」
「あのさ、おまえには、悪いと思ってるんだけど・・・」
「言いたいこと、だいたい分かるよ。あんた、ナツミのこと好きなんじゃない?」
「・・・」
「裕太見てると分かるよ。あたしには、あんたがナツミの事気にしてるのがありありと分かる。」
「・・・」
「あたしをフリに来たんでしょ?」
「フリに来たっていったら言葉が悪いじゃん・・・。」
「いいよ、あたしのことは。あんたの気持ちは、変えられそうもないしね。」
「・・・ごめんな。」
「あやまんなくてもいいのよ。」
・・・そして、またボクは走り出した。